結局、イラストの「著作権譲渡」って何が怖いの？

ねえしってる？

著作権って譲渡できないものがあるらしいぜ。

著作権は「精神的利益」「財産的利益」の2つを守ってて

「精神的利益」は譲渡できない

ねえしってる？

著作権は人権なんだ。

著作権はフランス革命のときからあるが
「世界人権宣言」にも「日本国憲法」にも「侵してはならない」人権として規定されてる

ここで質問。

ちょっと、俺様に人権譲渡しな

ねえ、いまどんなきぶん？

なんで発注者は著作権譲渡してもらった方が安心？

じゃあそこだけ規約にかけば？

じゃあさ

さあ、てめえの人権全てよこせ

…ちなみに
日本国憲法は百三条あって
著作権は百二十四条ある。

飲食店でどれ食べるかわからないから
「とりまお店のメニュー全部124個くーださい＾＾」

って言ってるようなもんなんだぞ
食べたいものだけ食べればいいのに、

実はこれがこの「譲渡」問題の肝かもしれないな…

発注者が著作権譲渡されてないと

第三者から権利侵害を受けたとき裁判がおこせない…

織り込んだ利用規約にすればいい

ライセンス料だぞ！！！*
（*契約内容によります）

これは既存・新規関係ないぞ

そうだぞ。著作権譲渡してないぞ。

おめーはイラストを物か何かと勘違いしてねえか

…著作権は何の一種だ？

出直してこい

著作権は財産権の一種で
だからこそ憲法によっても保障されるんだぜ

株や不動産などと同じ、イラストは謂わゆる「財産」だ。

例えば君は▲dobeソフトを開発したとしよう。

PC1台につき1ライセンスの買い切りソフトを10万円で販売する。

さて、ここでもし
1ライセンスだけ購入した人がこっそり複製して100台のPCに導入したとしたら？

うむ。そしてその900を回収しようと思ったら1800を稼がないと本来の採算が取れない。

極端な話だけどな。
でも実際、イラストでは簡単にこういうことが起こる。

これは
「プロモ1サイトにのみ使用するライセンスを譲渡する」
のがさっきの
「PC1台につき1ライセンスの買い切りソフト」に該当する。

でもイメージキャラクターだ。1ライセンスで収まるか？
別サイト、書籍、広告、販促グッズ、ポスター、イベント…あらゆる媒体に露出するかもしれねえ。もしかしたら第三者、第四者にも譲渡されて？それが数年になったら？

そしてもしこの時著作権譲渡してたとしたら？

おう

ふむ。おめーにはまだ早かったか……

例えば、不動産も財産の一種だ

ちょいちょい

そこらへんのマンション借りて、
1ヶ月分の家賃だけを支払って10年住み続けてこいや

しないよな

じゃあ
1ヶ月分の家賃払ったら大家さんは土地権利書渡してくるか？

1ライセンス分の利用料払ったらイラストレーターが著作権渡すのは当たり前？

プロモサイトのためだけに著作権譲渡をするってことは当然か？

家賃10万の分譲マンションって購入するとウン千万〜とかするけど、いくら上乗せするんだ？

わかってんじゃねえか、
だから売っぱらうなんてナンセンスなんだって

著作権の2種類を、さんはい！

そうだな！「精神的利益」と「財産的利益」

著作者の心を守ってるのが「著作者人格権」
著作者の財産守ってるのが「著作権（財産権）」

んで

著作者の心を渡すのが「著作者人格権不行使特約」
著作者の財産を渡すのが「著作権譲渡」

人権侵害されても私は何もいいませんよ（不行使）
って宣言させることで渡してはないけど封じてる。

まあだから著作権者（著作権保有者）は著作権を行使できても著作者人格権は行使できないってことだな。

陵辱されたって助けてって言いません
って宣言することだな

ツイッターで自作発言されたって話よく聞かないか？

あれは著作人格権「氏名表示権」の侵害なんだ（著作権法19条）

しかも著作者名詐称の罪にも問われる場合もあるんだぜ（著作権法第121条）。

ツイッターで投稿されたイラストを無差別に歪めるbot覚えてっか？

複数アカウントあるけど「Distortbot」ってやつ。

これは同一性保持権の侵害（著作権法20条）。

お、おん…

みなし著作者人格権っていうのもある

著作人格権はこの3つ。「18条」「19条」「20条」

でもこれは「第113条」。だからみなし。
これをみなし著作者人格権、または名誉声望権と呼んでる

例えば渡したイラストが意図せずこれらのことに使われたとする

それがさ、されるみたいだぜ…

つまり、
著作人格権不行使特約を結ぶと

陵辱されたって助けてって言いません
って宣言することだって話

サービス利用規約とか脳死で承諾OKとかしたくなるよな

ヤクザものとかでやべー契約書に脳死でぽんとか押す役だな、おめーは。

そういえば身内に、契約書に不利な項目があったのに気づかず土地取られた人いたなあ………

著作権ってすごく難しい印象があるけど
それってつまり一言で表せないからこそだと思うんだ

著作権は一言でまとめられないほど広い権利がある

そんな本一冊になるくらいの広い権利をまるごと取り上げる「譲渡」ってなんだかやりすぎ感ないか？

というか、先方だって疑われて気持ちいいもんじゃないと思うし心外なんじゃないかね。

結局、気持ちのいい関係築きたいよな。
楽しくお仕事したい。

「あなた人権侵害する気なんですか…？怖いなあ…びくびく」って思われながら仕事されるのってなんか違うし

「あなた人権行使する気なんですか…？怖いなあ…びくびく」って思われるのもやっぱ違う

まずは当然だけど「理解すること」

相手のこと、
権利のこと、
仕事のこと、

怖がらず話して聞いてみるのも一つの心の開き方。
信頼の証というか。

「納得できるお約束、一緒に決めましょ」

って言ってくれる人のほうが発注者側だろうが受注者側だろうが「信頼できる人なんだな、安心してお仕事できそうだな」って思わないか？

まずはお互いの心地よい状態をすり合わせる。
お互い譲歩できない部分があるなら但し書きなどして柔軟に契約書に盛り込めばいい。契約書だ法律だって構えずに。

あとあと想定しない使い方をするかもしれないなら
そのときまた契約しなおせばいい。

そうだな

手間だから、作る時間がないから、とか思うなら事前に準備をしておくことだな。
これはやだなとかこれは構わないなとか箇条書きにするなり、自分仕立ての契約書を作ってみるなり。

…ふう。大体こんなところか

疲れた。さあ、なでろ。

ゴロゴロゴロ