あけましておめでとうございます。
今年でフリーランス2周年なしんたけです。
今回はイラストの値段としんたけはこう向き合っている的なつぶやきというか感想。
実践的な話をお求めの方はこちらが参考になるかもしれない↓(外部リンク)
「いくらで引き受けてくれますか?」
初回依頼のメール。
必ずぶち当たる値段交渉。
イラストの値段の正体…ってなんでしょうか?
画力?
原価?
時間コスト?
学習コスト?
設備代?
事務費用?
付加価値?
紙代などわかりやすい仕入れ原価のないデジタルイラストの場合、誤解を恐れずに言うなればワンぽちで消滅するも複製するも自由なただのデータの塊なわけで
極論言ってしまえば無料で提供したとて、基本自身の財布が痛むこともない。
(いや実際には経費の回収が出来てないので痛んでる)
さて、そうなってくると、
千円のイラストと、十万円のイラスト、
一体何がちがうのだろう。。
と当時なってたわけですが、
最近はだいぶ腹落ちしてますというはなし。
「画力が上がったら」は闇
当時初めて依頼をいただいた際、
はていくらに設定するべきかと悩んだ末
結局苦肉の策で最低時給換算で見積もりを提案しました。
自分のイラスト自体に価値を定義するのではなく、
自分の稼働時間に価値を定義したと言うわけです。
より端的に言えば
自分の下手なイラストなんかに価値をつける勇気がなかった。
そもそも某クラウドソーシングを見渡してみれば随分と激安なイラスト商品が溢れている中で相場通りの値段設定にするなんて
駆け出しよわよわ底辺絵師がそんなことできるわけないのだ……
だがしかし、低価格で生活費が稼げるわけもなく。
さて、この葛藤を解消しようとしたとき、往々にして「画力を上げる」という解決策に走ることが一般的に多いと思います。
誰もが認める高品質な商品になれば相場のお金をもらうことに戸惑いを感じなくなるのではと。
でもこれは泥沼に嵌る考え方だったのはいうまでもありません。
底辺絵師に画力の天井は存在しないし
そんな簡単に上がるもんでもないし
葛藤の解決策に至らない。
てか前提、画力と価値は比例しないし。
それに自信をつける一番の要因はお客様が満足した結果であって画力が上がったとかいう自己満足な結果ではなかったのだ。
と後々になってようやく気づくことになりました。自戒。
「お客様からお金をいただく」意味
じゃあ結局底辺弱々絵師のあんたはイラストの値段の正体をなんだと心得ているのよ、といいますと
結論、「再生産コスト」でいいと考えてます。
結局それかよ、とツッコミが聞こえてきそうですが。
いやでもそれが一番しっくり来るんです、無理にイラスト自体に価値をつける必要なんかないのです。多分。
労働力の再生産費:労働力を再生産するために必要な費用。食費や家賃といった生活費
池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑭
ただ、言葉本来の意味ではなく持続可能な事業のための維持コスト、といったイメージです。
お客様には、『しんたけの事業が継続的に良質で高品質なイラストを再生産するために必要な、食費、PC代、勉強代などなどをいただいている。』という考え方。
この場合、イラスト料金を通して事業に投資していただいている感覚に近いかもしれません。
イラストの値段の付け方
過去、
最初は無償依頼でした。
インターンシップのようなもの。アポイントの方法、ヒアリングの仕方、スムーズなやりとりのための資料づくり、必要な基礎知識。
そうやってなんとなくわかったらトライアル価格での有償依頼。
一枚数千円で引き受け。
価格交渉、契約書や請求書などの書類の作成方法、事務処理、賃金の受け取り、などなどひとつひとつ壁を解消していく。
しかししばらくして、「有料じゃなきゃしんどい」となってきたら次の段階。
次の段階
例えば1ヶ月20万の支出が発生するとして。
例えば1枚5千円の収益があるとして。
20万の収益に達成するまでに40枚描く必要がある。
しかし1枚10時間かかるとして一日一枚休日返上で書き続けたとしても
30枚がせいぜい。
え、1日に2枚楽勝?
じゃあ、毎日1日2枚で1ヶ月60枚描いて何とか30万稼ぐとする。
でもそれは10年続けることはできるでしょうか。
帰省もせず、友達にも会わず、毎日毎日年中無休で缶詰?無理です。
付き合いで冠婚葬祭に行く用事があれば
アポイントや集客タスクで丸一日作業ができないなんてザラ。
そうでなくても画力上げるための時間も欲しいし、依頼内容が知らない知識範囲だったら描く前に調べる時間使うし、もちろん普通に事務作業もたくさん発生します。
30万稼げたとしてフルで懐に入るわけではありません。税金に保険に天引き要素はもりもりです。
そして何より、1ヶ月に60枚も依頼があるなんて多分その人は既に人気イラストレーターに違いありません。そう、こちとら底辺弱々絵師です。そんな依頼が来れば苦労しないのです。最初なんて1ヶ月に何枚か依頼が来れば万歳万歳御の字なのですから。
つまり、現実的かつ人間らしい生活を構想するなら多分10枚がせいぜい。
1ヶ月160時間働くとして、
もし一枚10時間でかけるとしたら、そのほかに
- ヒアリング
- 案件理解
- メールを含む事務処理
- フェーズごとの案出し作業、最終稿の確認
もろもろ含めたとしてバッファ含めて20時間。
160時間で割って8枚。
土日しっかり休んで一枚ずつ全力で制作するとしたら
しんたけの場合はこうなります。
結果、1ヶ月8枚で最低20万の収益が欲しいのであれば一枚あたり2.5万が最低ラインという計算。
もちろん継続的に毎月8枚もの依頼が来ればいいですが
実際には3枚の月もあれば0枚の月もあるかもしれない。
となれば倍額の一枚あたりの5万円が安牌となる計算です。
(これでも相場の半分だけど)
お金をもらう抵抗をなくす方法
ちょっと違う視点から。
例えばあなたがもし、
友人の綺麗なお家に招待されて素敵なパフォーマンスと共に沢山の食事したとします。「支払い?ワンコインでいいよ」といわれたなら
え、いいよ!ちゃんと払うよ!
と思うかもしれません。
人は相応のお返しをしたくなる。という返報性の原理があるからです。
価格以上の価値を提供し、感動分岐点を超えつづける。
そうすれば顧客から大満足がいただけるようになりますし
きっと自身のサービス価値に自信が持てるようになるかもしれません。
「画力」以前に必要なこと
外注しよう。
そう考えた時に発注者が考える懸念点を考えてみます。
思ったものが作れるだろうか。
失踪しないだろうか。
納期通りだろうか
変な人じゃないだろうか。
人当たりの良い人だろうか。
スムーズにやりとりできるだろうか。
中間報告など適度な進捗共有をしてくれるだろうか。
専門知識を持っていないし外注初めて。
つらつらと思いつく限り書き出してみると
イラストを制作して納品する過程で求められているものは多岐にわたるものの存外高度な技術とかではなく、ビジネスパーソンとして当たり前みたいな内容かもしれません。
でも出来てない、又はやっていない人は存外多い。模様。
特に格安で提供しがちなクラウドソーシング(クラソ)などでは。
というのも実際、特に某クラソの格安イラストを購入した方々から感想を伺うと、口を揃えて「がっかり……」という感想………………。
こちらからしてみれば値段相応という商品だったとしても
知見のない購入者からすれば「値段に関係なく外注すれば素敵なお気に入りのイラストが当然に納品されてくるに違いない」と確信するのも仕方のない話なのかもしれません。
ろくにヒアリングもない。
当然思ったものじゃない。
もちろん大した修正もできない。
そっけない対応。
たまに失踪したなんてはなしも。
非常に残念なことに、本当に最悪だったなんて感想を聞くこともあります。
もちろんクラソは素晴らしいプラットフォームであることは言うまでもありませんが、一部ではそういう現象が起きうる性格も持ち合わせていることは否定できないようです。
底辺であれば底辺であるほど
画力よりもやるべき大事なことがあるのかもしれません。
底辺絵師でも全力で提供できる付加価値 1
つまり依頼主が求めているものが「画力」だけなんてことはありませんし
自分が提供できるものが「画力」だけなんてこともありません。
イラスト制作の料金には「サービス料」も含まれているからです。(場合によるぞ)
初めてで不安って方には完成に近いラフ案と多めのパターンだし、丁寧な資料にまとめて時間をかけてヒアリング。
めちゃくちゃ急いでいる人には高頻度なやりとりとフットワークの軽い柔軟な対応。
明確なこだわりがある人には的確なサンプルの用意や則した知識と対応能力のすり合わせ。
案件や依頼主に合わせて適した立ち回りをするためには
それだけで経験と知識と発想力が必要になり、
ペンを持っている時間と同じくらい頭を悩まし、労力を使います。
底辺絵師でも全力で提供できる付加価値 2
あと提案力。
インサイトを理解し、依頼主の潜在ニーズを発見して、さらに良くなる解決策を提案する。
イラストを使用する商品媒体、コア層の年齢、性別、習性、刺さるデザイン、トンマナ、印象操作、バックボーン、などなど知識の習得はもちろん、
普段から街やネットにアンテナを張って常に流行を抑えることができる情報集取能力、
言葉尻や仕草から依頼主の心情を察して、バイアスをかけずに本当はどう感じているのかを深掘りしていくヒアリング能力。
「そう、そんなのが欲しかったんだ!最高!」って返答をもらうためにはたくさんの力が必要です。
これも画力とは関係ないけど非常に大事な要素だと思ってます。
あと個性にもつながる。がんばる。
値段=画力ではない
趣味でささっと描く行為と違って
依頼でのイラスト制作って完成までに何倍もの時間と能力と労力を使います。
継続的に良質で高品質なイラストを再生産するには
流行にアンテナを張りつづけるための時間も必要ですし
知識を身につけ画力を向上するための時間も必要です。
見聞を広げるための余暇だってとても重要なファクターになります。
そう考えれば画力だけに値段がつくのはなんとも悔しいはなしです。
だからイラストデータそのものに価値をつけるより
イラストを提供するサービスに価値をつける、と言った方が私はしっくりきます。
1000円のコーラはコーラそのものにつけられた値段ではなくサービスにつけられた値段なのですから。(これ)
まとめると、
画力が低いときこそ叩き売りするべきではない
と思ったというお話でした。
今回はこれで 👋
コメント